まことしやかに囁かれる「転職するなら35歳まで」という説があります。転職について調べた人であれば誰もが一度は目にするこの説ですが、果たして本当に35歳を過ぎると転職は出来ないのでしょうか。
このページでは転職に年齢的な限界があるのか知りたい方のために、
- 転職年齢のタイムリミット
- 〇歳が転職年齢の限界と言われる根拠
- 年齢別の企業が欲しがる人材の特徴
- 職種別に見た転職年齢のタイムリミット
についてお伝えします。一般的に言われているタイムリミットは過ぎているけれど転職をしたい方、転職リミットを知った上で今後のキャリアを考えていきたい方は是非目を通してみて下さい。
転職年齢のタイムリミットはいつ?
転職年齢に限界はない
転職に成功した人の年齢別割合を見てみましょう。
転職サイトdodaが2017年に行ったアンケートによれば、
- 25~29歳が38.1%
- 30~34歳が23.8%
- 35~39歳が13.1%
- 40歳以上が15.5%
となっています。25歳~34歳までの転職者に比べると占める割合は少ないものの、35歳を超えても転職に成功する人は「3割弱も存在する」のです。
また、このアンケートを2007年に行われたアンケートと比較すると、35~39歳の転職者は8%から13.1%へ、40歳以上の転職者は2.9%から15.5%へ、なんと12.6%も転職に成功する人が増えています。
10年前までは確かに35歳が転職の限界となっていたようです。
しかし、現在は転職成功者の年齢別割合を見ても分かる通り、「必ずしも35歳以上の人の転職が難しいとは言えない」状況となっています。
求められる資質を持っているかが重要
転職をする際に重要なのは「年齢」ではなく、「企業が求める資質」を持っているかどうかです。
例えば、ITの分野ではビッグデータや人工知能に関する高度な知識を持った人材が不足しているため、経験豊富で専門的な知識を持つミドル層の人材が人気です。
また、投資銀行に代表される外資系金融は、年齢に限らず常に優秀なセールスマン、トレーダー、トレードシステムを構築できるプログラマーを欲しがっています。
このように、現在の転職市場で年齢は採用を左右する要因のひとつではあるものの、必ずしも重要視されるものでは無くなっているのです。
転職に失敗する人は年齢に関わらず失敗する
年齢が原因で転職に失敗するケースは少なからず存在します。しかし、「年齢以外の問題が原因で転職に失敗する」人の方が圧倒的に多いのもまた事実です。
いくつか例を挙げると、
- 意味のない転職を繰り返している
- 年齢に応じたスキルを持ち合わせていない
- 自身の年齢を無視した無理のある転職を考えている
などのケースでは、年齢に関わらず転職に失敗する人が多いです。
転職回数があまりにも多い人は「嫌なことがあったらすぐに転職をする人」と思われますし、年齢に応じたスキルが無ければ「これまで努力をしてこなかった人」と思われます。
〇歳が転職年齢の限界と言われる根拠
28歳まで
異業種転職を志す場合、28歳までが限界だと言われています。今までの経歴がまったく活かせない業界へ転職するとなると、年齢的な限界は更に下がるでしょう。
30歳以降の転職では「即戦力となれるかどうか」が重要視されます。
そのため、30歳を迎える前には希望の職種に就いておき、実務経験を積んでおかなければならないのです。
30(32)歳まで
業界によって多少前後しますが、所謂「若手と言われるのは30歳まで」です。特別な理由がない場合、企業はなるべく若い人を採用し、長期間自社で働いてもらいたいと考えています。
だからこそ、専門職や管理職ではない人材が転職をするボーダーとなるのは30歳までだ、と言われているのです。
現職で管理職や専門職に就いていないのであれば、まずは今の会社でじっくりキャリアアップを図った方が良いでしょう。
35歳まで
35歳を過ぎると会社に在籍できる期間が短くなり、新しいものに対する対応力も落ちてくると判断されるため、転職は厳しいものとなります。
ただ、35歳が転職の限界だと言われる説はあくまでも「キャリアの定まっていない人」の転職に限った話です。
既に述べた通り、企業が求める資質を持っていれば何歳でも転職をすることはできます。
転職によるキャリアアップを視野に入れるのなら、35歳までに自分の行く末をしっかり見定め、必要な知識やスキルを吸収していく必要があります。
これ以降は、年齢に見合った実力を持っているかどうかが転職に成功できるかどうかのカギとなるでしょう。
年齢によって企業が欲しがる人材は異なる
20代の転職者に求められるもの
企業は20代の転職者に対してどのような資質を求めているのでしょうか。
- 他の企業・業種に染まり切っていない
- 柔軟に新しい職場のやり方に馴染む対応力
- 将来管理職となって活躍できる見込み
- 最低限のビジネスマナー
このように、企業は20代の転職者に対して、新卒と同じような資質を求めています。
違いがあるとすれば、ビジネスマナーが身についている点や社会経験があるために教育コストを圧縮できる点です。
そのため、20代で転職を考える際は、それらの資質を持っているとアピールできるか否かが重要となるでしょう。
30代の転職者に求められるもの
20代の転職者に比べて30代の転職者に求められる資質はとても多くなります。
具体的には、
- 即戦力となりえる経験、知識、スキルを持っているかどうか
- 数年以内に管理職として活躍してくれそうか
- コミュニケーション能力に長けているかどうか
- まだ伸びしろが残っていそうかどうか
などを厳しくチェックされます。特に「管理職として活躍してくれそうかどうか」は重要で、30代中盤ともなれば周りをまとめ上げるリーダーとしての経験がないと苦しい転職活動となるでしょう。
加えて、今後更に「成長が見込めるかどうか」も、企業としては非常に気になる点です。職務経歴や現職でのポジション、実績などを見て「成長スピードが遅い」と判断されると、一気に転職は厳しくなります。
40代以上の転職者に求められるもの
どんな業界でも第一線で活躍している40代の人材はベテランとして企業の主軸となっています。また、40代以降は社内での働きぶり以外にも、どのような人脈を持っているかも選考の基準となるのです。
40代で転職をするならば少なくとも、
- チーム単位での実績が複数ある
- 高度な専門知識を持っている
- 部下の育成に長けている
- 社外に幅広い人脈を持っている
- 全体を俯瞰してみることができる
などの資質が必要となります。「人脈や全体を見通す力」は特に重要で、遠くない将来幹部として経営に参画してほしいと企業が考えているケースでは必須の資質です。
企業は働くことのできる期間が短い40代以上の人材を受け入れる際「売上・利益に直接的な貢献をしてくれるかどうか」を基準に選考します。
いくつか例を挙げるなら、
- 大口の顧客を抱えている
- 売上・利益を上げるプロジェクトの企画・立案ができる
などのスキルがあれば転職を成功させられるでしょう。逆に言えばこれらの資質を持っていない場合、転職先の幅は大きく狭まります。
ただ、ITや製薬など技術・研究職の場合は少し話が違ってきます。技術・研究職では部下をまとめ上げる資質や人脈、経営力があるかに関わらず、知識とスキル、経験が重視されることが多いのです。
優秀な技術者、研究者はどこも欲しがっていますから、「分かりやすい実績や持っているスキル」を上手くアピールすれば大きくキャリアアップすることも夢ではありません。
職種別・転職年齢のタイムリミット
事務・会計・人事・法務
所謂「裏方」と呼ばれる会社を、内側から支える職種の転職限界年齢は「28歳前後」です。
事務は例外ですが、会計・人事・法務などは長年の経験がものを言う職種であるため、企業は転職者を受け入れる際、若手を採用し、じっくり教育を施したいと考えます。
もちろん、それらの職種で管理職として活躍している場合は別ですが、異業種からの転職となれば28歳を超えると転職が難しいと考えておいた方が良いでしょう。
また、事務職は女性が優先的に採用されるケースが多く、男性が事務職を志望する場合は年齢に関わらず厳しい転職活動となることが予想されます。
近年ではその風潮はだいぶ落ち着いてきたものの、気質の古い企業や伝統的に事務職は、女性を採用している企業は未だ多いです。
製薬・IT・(管理職)
研究職や技術職、職種ではありませんが管理職の転職限界年齢は「40歳前後」です。転職限界年齢が高い背景には、人材の不足が関係しています。
例えば、近年細分化・高度化の流れが目立つIT業界では、新しい事業を始める度に専門知識を持つ技術者が必要となります。
研究職の場合も同様で、研究テーマによっては新設された部署の人員ほとんどが、中途採用者ということもあるほどです。
ほとんどの場合、管理職のポジションは既存の人員から充填されます。部長や取締役以上などの幹部クラスでは特にその傾向が強く、わざわざ外様の管理職経験者を幹部人員として登用することは稀なのです。
将来的に幹部となることを目指しているのであれば、出来るだけ早いうちに転職を済ませておいた方が良いでしょう。
現場系の建設業・介護業界
型枠大工やとび職など、現場系の建設・建築業や介護業界は常に人員が不足しています。そのため、少々経歴や実務経験が心許なくとも「50歳以上」の転職者を受けいれるケースが少なくありません。
ただし、現職である程度の地位にいる方がこれらの職種に転職する場合、成功とは言えない結果に終わることが非常に多いです。
営業職
営業職では実績がすべて、と考える企業が多いため、プレイヤーとしての転職限界年齢は「ほぼ無いに等しい」状態となっています。
とは言え、定年退職をするまで第一線でセールスに従事することは難しく、管理職への昇進を考えるのであれば、実際は40歳前後が転職限界年齢となるでしょう。
営業のキャリアを活かし、転職先で管理職として活躍することを目指す場合は、人脈の幅が広いかどうかを見られます。
金融業
金融業の転職限界年齢は企業や望むポジションによって大きく異なるため、一概に「いくつまでが限界」と言うことは出来ません。
例えば、大手銀行や一部の証券会社は新卒採用がメインとなっており、中途採用はほとんど行いません。また、行うとしても第二新卒など若手を好む傾向にあるため、転職限界年齢は非常に低いものとなるでしょう。
逆に外資系の投資銀行などは、在職時からヘッドハンターから連絡が来るなど、人材の争奪戦を繰り広げており転職に苦労することはあまりありません。
まとめ
転職をするのにタイムリミットはありませんが、年齢を重ねると求められる資質が増え転職が難しくなる傾向にあります。
35歳以降の転職を考えるのなら、
- 管理職としての資質
- 専門知識の有無
- これまでの実績
- 経営者目線で業務を見られるかどうか
などの資質が問われます。
逆に若手の場合は年齢がネックとなることは少なく、
- 最低限のビジネスマナーがあるかどうか
- 伸びしろがあるかどうか
- 異業種・他社の風土に染まり切っていないか
- 柔軟な対応力があるかどうか
などを基準として選考が行われます。
どの年齢にも限らず言えることは年齢に応じた経験・知識・スキルさえあれば、転職を成功させられるということです。