転職活動は、一度に複数の企業で面接を受けるものです。
そのため、後日いくつかの企業から内定をもらうこともあるでしょう。しかし、当然ながら入社できる企業は1社のみです。他の企業には内定を辞退する連絡をしなければいけません。
こういった疑問を持つ方も少なくないでしょう。ただ、転職活動をしていれば内定を辞退しなければならない場面も出てきます。
- 募集内容と条件が違った
- 他の企業に入社する
- 企業の悪い噂を聞いた
このように、内定を辞退したいシチュエーションになることは意外に多いものです。
内定を辞退するには、社会人として最低限のマナーを心得たうえで対応するべきです。なぜなら企業で面接を受けたのは、あなた自身だからです。
ビジネスマンとしての礼儀をわきまえた行動ができなければ、将来のキャリアに傷をつけてしまいます。
そこで今回は、スマートに内定を辞退するポイントを紹介します。
- どのように内定を辞退するべきなのか
- 連絡手段は何が最適か
- 誰に連絡するべきか
- 連絡する時間帯
などなど、転職活動時の内定の辞退のポイントについて解説していきます。連絡時の良い例文から悪い例文まで紹介するので、ぜひ参考にしてください。
転職面接の内定は辞退できます
企業から頂いた内定は辞退することができます。
日本国憲法でも「職業選択の自由」が定められており、内定を辞退することが違法でないことを明示しています。
日本国憲法第22条第1項
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
このように法的にも内定は辞退することができます。
内定を頂いた企業に対して、誠意のある態度で辞退することを説明するのは、社会人として当然のマナーです。謝罪の気持ちをしっかり相手に見せることは、スマートに内定を辞退するポイントになります。
企業の中には採用担当者から「辞めないでくれ」と粘られることもあります。この際は曖昧な返事で依頼を流そうとするのではなく、辞退する意思を明確に伝えるようにしましょう。
第一志望でない企業から先に内定をもらったら「保留」する
転職活動をしていると、第一志望でない企業から先に内定を頂くこともあります。
という状況も出てくるはずです。この場合は返事を「保留」しましょう。
内定には辞退だけでなく、保留を選択することも可能です。ここで注意するべき点は、決して承諾しないことです。
法律では、承諾後に辞退を申し出ることも可能になっています。しかし、企業に対して多大な迷惑がかかり、時にはトラブルに発展することもあります。
また、保留のお願いをすると企業側は「この人は内定を辞退するかもしれない」と判断します。そのため、早急に社員を採用したい企業には、悪い印象を与えることもあります。
単純に「保留させていただきます」と言うのではなく「すぐに入社承諾したいのですが〜」という言葉を添えて悪い印象を与えないように配慮するのがポイントになります。
内定を辞退するなら1日でも早いほうが良い
なぜなら企業の採用担当者は、新たな社員を募集しなければなりません。採用者を探すまでには時間がかかります。その他にも、あなたが入社することに対して着々と準備に取り掛かっています。
内定辞退の連絡が遅れてしまうと、企業に少なからず迷惑がかかります。「気まずいな」と言う気持ちは分かりますが、迅速な連絡はスマートに内定辞退する秘訣と言えるでしょう。
「内定を辞退する場合は、早く辞退の返事をしなければいけない」という決まりはありません。
しかし、企業はあなたのために動いています。採用担当者の負担を少なくするためにも、真摯な態度と迅速な返答を心がけましょう。
内定辞退の連絡は電話で行うのが基本
内定を辞退する場合の連絡手段ですが、基本的には電話で行うのがベストです。
企業に対して誠意をもって迅速に連絡することを意識しましょう。
「電話は気が引けるからメールがいいな」と思うのも無理はありません。ただ、はじめからメールで辞退の連絡をしてしまうと、誠意が伝わりにくくなってしまうので避けてください。
内定辞退の連絡をする相手は、大きく分けて以下の2つがあります。
- 企業の採用担当者
- 転職エージェント
企業の採用担当者は、あなたを採用することを決めた本人です。内定辞退の連絡をする際は、受付に「採用担当者の〇〇さんをお願いします。」と明確に伝えるようにしましょう。
転職エージェントを利用して企業に応募した方は、企業ではなくエージェントに連絡をします。
企業に直接連絡してしまうと、エージェントが困惑することもあります。内定を辞退する旨はエージェントに伝えてください。
この際、エージェントから「考え直してもらえませんか?」とお願いされることもあります。
エージェントは企業との信頼関係を大切にしているものです。何度も食い下がられることもありえます。
エージェントに連絡する際は、事前に内定辞退の明確な理由を考えておくのがおすすめです。ここでも乱暴な言葉を吐いたり、適当な返答をしてしまうのは社会人としてスマートではありません。
エージェントであっても、真摯な態度を意識するようにしてください。
電話で内定辞退の連絡をする場合は以下のような注意点があります。
電話する際は時間帯に注意
企業に内定辞退の連絡をする場合は、電話する時間帯にも配慮しましょう。
9時〜18時までの一般的な就労時間の企業の場合、ベストな時間帯は以下の2パターンです。
- 10時〜12時
- 13時〜17時
逆に電話するのを避けた方が良い時間帯は以下の3パターンです。
- 始業直後
- 昼休み
- 定時前後
始業直後は、慌ただしい時間帯のため好ましくありません。昼休みは各社員が休憩に入っているものです。定時前後は、その日の仕事を片付けるため忙しい時間帯になっています。
採用担当になるべく不快な思いをさせないためにも、電話する時間帯に配慮していきましょう。
就労時間は企業によって異なります。電話する時間帯を考えるポイントは「忙しくない時間帯」を選択することです。
担当者が不在の場合メールもOK
電話で内定辞退の連絡をしたときに採用担当が不在のこともあるでしょう。
このような場合は、メールで連絡することも可能です。「なるべく早く連絡する」という誠意を伝えるためにも有効な手段と言えます。
メールで内定辞退の文章を送信する際は、以下のポイントを踏まえると良いでしょう。
- 電話した旨を記載する
- 内定を辞退する理由
- 謝罪の文章
事前に電話したものの不在のため、メールを送っていると記載しないと相手に悪い印象を持たれてしまう可能性もあります。
「少しでも早く連絡するためにメールを送った」ということを明示するのがポイントです。
内定を辞退する理由については
- 他社への入社を決めた
- 家族と相談した結果
など人によって様々な理由があるでしょう。ここでも失礼のないような文章を作るように意識してください。
メールには、採用担当と企業に対して謝罪の文章を入れるようにしてください。
電話をしたものの採用担当が不在だった場合は、上記で紹介したポイントを踏まえて迅速にメールを送信することで、あなた誠意を伝えることができます。
来社を依頼される場合も
企業や採用担当者によっては、内定を辞退することを対面で説明してほしいと頼まれることもあります。企業側から来社を依頼された際は、日時を調整して直接伺うようにしましょう。
企業側が来社を依頼する主な理由は以下のようなものです。
- 具体的な辞退の理由が聞きたい
- あなたを引き止めるため
来社を依頼する理由の多くが、「具体的な辞退の理由が聞きたい」というものです。
例えば、辞退の理由が「他社へ入社する」の場合、「なぜ他社を選んだのか」という明確な理由を知りたい企業もあります。
来社を依頼する企業側は、内定辞退する人を極力減らしていきたいと考えています。そのため、具体性のある回答が好ましいです。
対面で話したいという企業の中には、あなたに内定辞退を考え直してもらうために引き止めようとしてくることもあります。
人員不足で困っている企業などでは、より好条件を定時してくる場合もあります。
内定辞退を引き止めようとする相手に対しては、明確に断る強い意思が必要です。
適当な意見を述べてしまうと、より相手を混乱させてしまいます。具体的な辞退の理由を一貫して貫くようにしましょう。
企業側は、あなたに怒りを覚えて罵声を浴びせるために来社を依頼するわけではありません。電話では伝わらない部分を対面で話したいと感じているものです。
相手の対応に真摯に答えるためにも、具体性のある辞退理由をもって対話するようにしましょう。
内定辞退する際の例文
ここでは、実際に内定辞退の連絡をする際の例文を紹介します。
電話、メール、転職エージェント、そして内定を保留する際の例文もあります。転職活動で内定辞退の連絡をするときの1つの参考にしてみてください。
内定辞退を電話でする例文
まず電話で内定辞退の連絡する際の例文を紹介します。
採用担当の〇〇様はいらっしゃいますでしょうか。」
採用担当者へ
この度は、内定をいただき誠にありがとうございました。しかし、検討の結果、大変恐縮ではございますが今回の内定を辞退させていただきたくご連絡させていただきました。
検討を重ねた上で、他社へ入社することを決めました。
内定を頂いたにも関わらず、こちらの都合でご迷惑をかけてしまい大変申し訳ございません。
電話で連絡するときは、内定を辞退することを明確に伝えながら謝罪の意思を示すことがポイントです。
内定辞退のメール例文
メールで内定を辞退する場合の例文を紹介します。
内定辞退のご連絡(山田太郎)
株式会社〇〇 人事部
採用担当:〇〇様
お世話になります。内定を頂いた山田太郎です。
先ほど、お電話させていただきましたが、ご不在でしたのでメールにて失礼します。
この度は、内定をいただき誠にありがとうございました。
誠に勝手なご連絡で大変恐縮ですが、検討を重ねた上、この度は他社への入社を決意しました。
採用に際し、お時間を取らせてしまったにも関わらず、ご期待に添えることができず大変申し訳ございません。
採用に関わった方々に感謝すると共に心からお詫び申し上げます。
本来ならば、お電話でご連絡するべきですが、これ以上〇〇様にご迷惑をかけないためにも早めにご連絡したいと思い、メールを送らせていただきました。
こちらの都合で誠に申し訳ございませんが、ご理解のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
山田太郎
メールで連絡する時は先に紹介した通り、
- 事前に電話していること
- 内定を辞退する理由
- 謝罪の文章を記載する
のがポイントです。
転職エージェント
転職エージェントに連絡する際の例文を紹介します。
お世話になっております。山田太郎です。
今回、内定を頂いた株式会社〇〇の件ですが、検討の結果、内定を辞退させていただくことにしました。
辞退の理由ですが他社から内定おり、そちらの企業へ入社することに決めました。
こちらの都合で大変申し訳ございませんが、何卒よろしくお願いします。
エージェントによっては詳細な辞退理由を聞かれることもあります。その際は、明確な理由を述べるようにしましょう。エージェント経由でない企業に入社する場合も同様です。
保留する際の例文
ここでは内定の辞退ではなく、一時的に保留する際の例文を紹介します。
お世話になります。
本日、内定を頂きました山田太郎です。
この度は、内定を頂きまして誠にありがとうございます。
すぐにでも承諾のお返事をすべきなのですが、転職に関して家族へ相談したいと考えております。
こちらの都合で大変申し訳ないのですが、◯月◯日まで返事を待っていただくことは可能でしょうか。
内定の返事を保留する際は、入社の意思があることを伝えるようにしましょう。その上で保留する理由と明確な保留期間を提示します。
内定辞退の連絡でやってはいけない断り方
内定を辞退する理由を伝える際は、相手の立場を考えて言葉を選ぶ必要があります。
ここで、不満のような意見を述べるのは社会人として良くありません。悪い印象を与える辞退理由には以下のようなものがあります。
- 給料が少ない
- 思っていたのと違った
- 他社の方が魅力的
もし、採用担当に対して「給料が少ないので内定を辞退します。」と伝えたら相手はどんな印象をいだくでしょうか?
きっと「失礼な人間だな」と感じることでしょう。これでは誠意を伝えることはできません。
ネガティブな印象を与えることにメリットはありません。
「給料が少ない」というよりも、「条件等を見直して検討した結果、内定を辞退させていただくことにしました」と伝えた方が好印象なのは間違いないでしょう。
最低限のビジネスマナーと言えます。
まとめ
転職活動時の内定の辞退には以下のようなポイントがあります。
- 内定は辞退することができる
- 保留する場合は期間を明確に伝える
- 内定辞退は迅速に(1日〜3日)
- 連絡手段は電話がベスト
- 電話する時間帯は10時〜12時 or 13時〜17時
- 担当が不在の場合はメールで連絡
- 来社を依頼されることもある
- 連絡する際は「辞退理由」と「謝罪」を伝える
- メールの場合は事前に連絡していることを明示
- 転職エージェントは電話・メールどちらでもOK
- 保留連絡は「入社の意思がある」ことを伝える
- ネガティブな言葉は変換する
転職活動で内定を辞退する場合は、迅速な連絡と社会人マナーを踏まえた真摯な対応が大切です。
内定を辞退するのは気が引けてしまうでしょう。しかし、内定辞退する人間はあなただけではないはずです。採用担当の立場としても、辞退の連絡は早いに越したことはありません。
転職活動は、より良い環境で働きたいと望むからこそ行うものです。だからこそ、時には内定を辞退する決断を下すこともあるでしょう。
内定を頂いた企業に感謝し、少しでも良好な関係で終われるよう、社会人としてスマートな対応をしていきましょう。