転職の面接では転職したいと思った理由を必ず聞かれます。
自己PRや自己紹介に比べて転職理由は軽視されがちですが、転職理由をはっきりと話せるかどうかが面接の合否を左右すると言っても過言ではありません。
このページでは、
- なぜ面接官は必ず転職理由を聞くのか
- 転職理由を話す際に踏まえておきたいこと
- 転職理由の組み立て方
- 転職理由の参考例
をご紹介します。
「どこまで正直に転職理由を話して良いの?」、「言ってはいけないことはあるの?」と悩んでいる方は是非目を通してみて下さい。
面接官が転職理由を聞くワケ
長く勤めてくれそうか知りたい
企業は採用する以上、採用者には出来るだけ長期間自社に在籍してほしいと考えています。
あまり知られていませんが、中途採用にはかなりのコストが掛かります。
人材紹介会社を使って中途採用を行う場合、企業は人材派遣会社に対して、採用した人材に支払う年収の30%~35%を支払わなければいけません。
例えば、年収400万円の人材を採用すると、120万円ものコストが掛かるのです。
大きな費用を投じて採用をしたにも関わらず、転職者が半年も経たず辞めてしまうと、採用担当者の責任問題にもなりかねないでしょう。
加えて、いくら即戦力を手に入れやすい中途採用とは言え、実際の戦力として数えられるまでには少なからず「教育」という見えにくいコストが掛かります。
このような背景があるため、どの企業の面接官も「長く勤めてくれそうか知りたい」と考え、重要な判断材料としているのです。
- 転職理由が漠然としている
- 嘘をついている疑いがある
- 待遇ばかり気にしている
と面接官が感じた場合は即不採用となるでしょう。
なぜなら、このような特徴のある応募者の大半は、企業に魅力を感じて応募をしてきたのではなく、「現状から逃げるため」、「待遇を良くするため」だけに応募をしてきた可能性が高いからです。
責任能力があるか確かめたい
どこの企業も責任能力のない人を採用したいとは思いません。
例えば、
- トラブルが起きた時すぐ人のせいにする
- 自分のするべき仕事をやり遂げられない
- 責任のあるポジションに就きたがらない
などの特徴がある人を採用してしまうと、採用してもすぐに辞めてしまう、会社の輪に入れないなどのトラブルが起きてしまいます。
このようなトラブルを避けるために、面接官は「転職理由を聞くことで責任能力の有無」を確かめようと考えるのです。
なので、転職理由を話す際は人や環境のせいにしないよう気をつけましょう。
仕事に熱心な人か知りたい
仕事に熱心な人であればあるほど、会社への貢献度が高まります。
だからこそ、面接官は仕事に対する熱意があるのかどうか見極めたいと考えるのです。
面接官は転職理由を聞きながら、
- これからも自身のスキルを高めようと考えているかどうか
- 困難な状況に陥った時、解決しようと積極的に動く人かどうか
- 言われたことだけでなく+αの働きが出来るかどうか
などをチェックしています。
そのため、
- 現在の自分のスキルに満足している
- 面倒なことから逃げてきた
- 指示を待つタイプの人間だ
と捉えられかねない表現は避けるべきです。
自社と応募者の相性を見極めたい
例えば、年功序列の風土が残る企業に応募したにも関わらず「実力を評価されたいと思い、転職を決意した」などと言ってしまうとどうなるでしょうか。
面接官は「この応募者とウチとの相性が良くないな」と判断するでしょう。
相性が悪いと思われたらまず採用されることはありません。
相性に問題がないと面接官に思わせるためには、
- 企業研究をして理念や職場の雰囲気、評価の方式を確認しておく
- 企業理念や仕事のやり方に共感しているとアピールする
などが有効です。
転職理由を話す上で踏まえておきたい4つのこと
その1 正直に話す
転職理由を話す際、絶対に嘘をついてはいけません。
ベテランの面接官は些細な情報を元に嘘を見抜きます。
- 誰でも話せるような当たり障りのない内容しか言わない
- どこか落ち着かない話し方をしている
- 不必要な力説やボディランゲージを行っている
どんな面接官でも最低限このくらいはチェックしています。
また、万が一嘘がバレてしまった場合、内定の取り消しや転職後であれば懲戒解雇を受けることも多いです。
前職に問い合わせて勤務態度や業績、退職の理由を聞く企業もありますから、転職理由を話す時は正直に本当のことだけを話すようにしましょう。
とは言え、「すべてを赤裸々に話す必要はありません。」
例えば、
- 給料が悪いから辞めた
- 上司が気に入らないから辞めた
- 仕事にやる気が出なくなったから辞めた
などと言ってしまうと、面接官の心証は限りなく悪くなります。
後述の「ネガティブな話はしない」の項目にも通じますが、ポイントは「正直に話しつつも前向きな表現をする」ということです。
その2 ネガティブな話をしない
転職理由はネガティブになりがちです。
しかし、ネガティブな情報をそのままネガティブに伝える必要はありません。
給与が低いことが不満で転職をした、と言うとネガティブに聞こえますが、実力主義の職場で評価されたいと言えばポジティブに聞こえます。
ネガティブな話が多いと、面接官は「悲観的な考え方の人だ」と応募者に対して悪い印象を持ち、採用は遠くなってしまうでしょう。
ただ、嘘をついてまで転職理由を捻じ曲げる必要はありません。
あくまで、「ポジティブに話すことが重要」です。
その3 話し方を工夫する
同じ内容を話しても、良い姿勢と明るい表情で話したのと、姿勢悪く無表情で話したのとでは聞き手の感じ方が大きく異なります。
転職理由だけに限らず面接の際は
- 姿勢を良くする
- 明るい表情で受け答えをする
- 状況によっては身振り手振りを交える
これらのことを徹底するようにしましょう。
緊張に弱い、明るい表情をするのが苦手、という場合は親しい人にお願いして、面接練習をするのも有効です。
鏡に向かって表情や姿勢を意識しながら転職理由を述べてみるのも良いでしょう。
その4 退職理由と志望動機の間に繋がりを持たせる
転職理由を話す際は、前職を辞めようと思った理由だけを話すのではなく、一歩踏み込んで志望動機との繋がりを意識して話すようにしましょう。
退職理由と志望動機に繋がりを持たせると、
- ポジティブな話で転職理由をまとめられる
- 一貫した考えをもっているとアピールできる
などのメリットを得られます。
特に前職で達成できなかったことが、応募先の企業で出来ると考えた、という流れを作りやすくなるのは大きなメリットです。
志望動機に触れつつ転職理由を話し終えれば、「問題が起きた時、積極的に改善しようと動ける人だ」と面接官に印象付けることが出来ます。
また、前職に就いた理由をそのままに、同じ思いを持って転職をすることにした、という話し方をすれば「自分は一貫性のある人間だ」とアピールすることも可能です。
転職理由の組み立て方
自己分析をする
漠然とした転職理由を話してしまうと、面接官は「前職では真面目に仕事をしていなかったのではないか」、「他の会社でも良いのではないか」と感じます。
そうならないためには転職理由のスクリプトを作成する前に、自己分析をして「転職の動機を明確」にしておくことが大切です。
- もっとやりがいのある仕事がしたい
- 異業種を体験してみたい
という理由ではイマイチ転職を決意したワケや、熱意が伝わってきませんが、
- 今より責任のあるポジションに就き、自分のスキルを高めたい
- あえて異業種にいた自分が転職をすることで、応募先の企業に新しい風を吹き込みたい
という風に、同じ理由でも自己分析をした上で具体的に表現すればグッと説得力が増します。
転職の動機を前向きに表現できないか考える
自己分析をして転職の動機が分かったら、ポジティブに表現することが出来ないか考えてみましょう。
例えばよくある転職理由として、
- 給与が少ない
- 職場関係の悩み
- 残業が多すぎる
などがあります。
これらの理由をそのまま述べてしまうとネガティブな理由に聞こえてしまいますが、
- 成果に対して適切な評価をしてほしい
- 職場の人達と、これまでとは違う関わり方をすることでコミュニケーション能力を高めたい
- キャリアアップのために自分の時間を使いたい
と表現することで、ポジティブに転職理由を話すことが出来ます。
志望理由に触れつつまとめる
転職理由を述べた後は志望理由に触れつつ回答をまとめます。
志望理由を述べる際は、先に話した転職理由と、応募先の企業との関連性をアピールしつつ話すと良いでしょう。
「○○がしたかったが前職では出来なかった、だから貴社に転職したら○○をしたい。」
「以前の職場ではダラダラと残業をした人が偉いという雰囲気があった、私は効率重視の考えを持っているので、テキパキと仕事をこなす人が評価される職場で働きたい。」
このように、応募先の企業研究を行った上で、現在は出来ていないことが、転職をすれば可能になるとアピールすれば、応募先の企業との関連性をアピールすることができます。
転職理由の参考例
現職の待遇が理由のケース
「以前の職場は実力主義を掲げているものの、実態は年功序列の傾向が強く、成果を上げてもなかなか評価されませんでした。そのため、達成した成果がしっかりと評価される環境で働きたいと考え転職を決意しました。」
自分の考えと企業の理念との繋がりをアピールしている
実力主義を掲げる企業に対して、実力主義が肌に合うと相性の良さをアピールしています。
このように、応募先の企業との相性をアピールするのは非常に重要で、面接官から好印象を得られる可能性が高いです。
自身と企業との相性をアピールするためには、
- 応募先の企業の考え方、理念を調べておく
- 自分と共通する考え方が無いかチェックする
などの取り組みをしておきましょう。ただ、無理に自分との共通点を探す必要はありません。
どうしても見つからない場合は嘘をついてまで相性が良いとアピールするのではなく、相性が悪いと判断されないよう心掛ける程度に留めておきましょう。
待遇の悪さが転職の理由だとストレートに伝えていない
「正当に評価されたい」という思いは、裏を返せば「現職では正当に評価されていない」と感じているという気持ちの表れと言えるでしょう。
ただ、ストレートに待遇が悪いと言うのと、正当な評価が欲しいと言うのとでは聞き手の受け取り方がまったく異なります。
転職理由を話す際は、正直に話すことが重要ですが、「ネガティブな理由に隠れた自分の本当の気持ちを明確」にして、面接官に伝えることを忘れないようにしましょう。
残業の多さが理由のケース
「貴社には社員のスキルアップを図るための独自制度があると伺っております。是非、自身のスキルを向上させ、貴社に還元させて頂きたいと思い転職を決めました。」
社内制度に触れることで熱意をアピール
待遇や条件だけを見ている応募者から、細かな社内制度の話が出てくることはありません。
そのため、社内制度に触れておくと企業研究を熱心に行ったということが面接官に伝わり、熱意をアピールできます。
また、制度を利用したいと述べるだけでなく、利用した結果、会社に還元したいと伝えているのも好印象です。
残業や休日出勤の話題は基本NG
参考例では正直に前職では残業や休日出勤があったことが不満だったと話していますが、基本的に残業や休日出勤に対して否定的な意見を述べてはいけません。
残業・休日出勤がイヤだと言ってしまうと「会社に貢献する気持ちがない」、「仕事に熱心なタイプではない」と判断されてしまうのです。
この場合は、
- 転職したら前職では難しかったことをやりたい
- プライベートの時間をスキルアップのために使いたい
と述べるのが適切でしょう。
人間関係が理由のケース
「これからは今まで培ってきたノウハウを活かし、自分ひとりでも課題をやり遂げる能力を身に着けたいと考え、貴社の求人に応募致しました。」
人間関係が転職理由である場合は話し方を工夫する
職場での人間関係が悪い、と伝えてしまうと、どのような話し方をしても「この人にも問題があるのでは」と疑惑の念を向けられます。
人間関係を理由に転職を決めた場合は、はっきりと人間関係のことを話すのではなく、参考例のように「職場の人と今までとは違う関わり方をしたい」と述べるようにしましょう。
まとめ
面接官は、
- 長く勤めてくれるか
- 責任能力があるか
- 自社との相性が良いか
を知るために転職理由を聞いてきます。
転職理由を述べる際は、
- 嘘をつかない
- ネガティブな話をしない
- 志望理由も話す
- 表情や姿勢にも気を配る
以上4点に気をつけましょう。これらは転職理由を話す際に最低限踏まえておきたいことです。1点でも該当すると感じた人はすぐに直すようにして下さい。
難しく考えがちな転職理由の組み立て方ですが、
- 自己分析をする
- ポジティブな表現が出来ないか考える
- 志望理由で締めくくる
この流れで組み立てれば、面接官の心証を良くするためのスクリプトを作ることが出来ます。